事例No17

事例No17 (N8-7)

■ タイトル
B型肝炎キャリアに対して生活指導を実施しつつ、定期フォローを行っている事例
■ 性別
男性
■ 生年月日
1968年生
■ 事例化した年齢
40
■ 職種
現業職
■ 職種コード
技能職
■ 業務歴
  • 重量物取り扱い業務
  • 深夜勤務
  • 長時間の時間外勤務
■ 飲酒歴
飲酒頻度
7回/週
日本酒換算
2-3合→1-2合
飲酒期間
51年間
■ ウイルス以外で肝障害の程度を増悪させた要因
  • 飲酒
■ 病状
無症候性キャリア
■ ウイルスの種類
B型肝炎ウイルス
■ 産業医がこの事例を知った経緯
本人が40歳のとき、定期健康診断の問診時の本人申告により知った。
■ 本人が感染を知った経緯
26歳時に定期健康診断にて肝障害を指摘され、医療機関を受診したところ判明した。
■ 就業上の措置内容
なし
■ 主治医との連絡
なし
■ 上司・人事との連絡
なし
■ 措置後の経過
年1-2回、産業医あるいは産業看護職が健康診断事後措置としての面談を実施している。26歳時に定期健康診断にて肝障害を指摘され、医療機関を受診。精密検査にてB型肝炎ウイルス感染を指摘された。妹もHBV陽性でありB型肝炎ウイルスキャリアが疑われた。当初の治療方針は不明であるが、本人によると肝障害に対し、肝保護剤の静注といった治療のみを受け軽快したとのこと、20歳代であったため、自然経過としてのセロコンバージョンをねらったものと推定される。以降、通院はしていなかったが、毎年の健康診断で軽度肝障害を認めており、再評価目的で受診指示。精査の上、ウイルス量少量であり肝炎に対しては治療不要との診断であった。定期一般健康診断にて軽度の肝障害が継続。単身赴任、交替勤務といった背景から不眠もあり飲酒量が多く、節酒指導、睡眠導入剤の投与をおこない、経過観察中である。
■ 事例への対応を振り返って
B型肝炎ウイルスの無症候性キャリアで特に治療や就業上の措置を要しなかった事例である。セロコンバージョンした場合でも慢性肝炎~肝硬変~肝癌に移行することがあるため定期的な通院、検査が必要と考えられるが、本人も自分がどういう状態なのか把握しておらず、肝障害が正常化したこと、ウイルスに対する治療が不要であったことから通院を中断してしまっていた。本人への肝炎に関する情報提供が通院先の医療機関で不足していた可能性がある。この情報提供の不足部分を事業場内産業保健医療職で補い、通院が途切れないようにすることが重要であると考えた。
この事例は単身赴任や交替勤務による睡眠障害および大量飲酒により肝障害が継続しており、肝障害の程度によっては交替勤務制限といった就業上の措置が必要となる事態もあり得る。また、睡眠障害に加えて高尿酸血症や緑内障を合併しており、薬物性の肝障害にも留意しなければならない。したがって今後も主治医との情報交換、連携が必要と考える。
■ 事業所の職種
製造業
■ 労働者数
1,000名以上
■ 産業医の基本属性
専属産業医
■ 診療業務の有無
あり